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最高裁判所第一小法廷 昭和41年(オ)1362号 判決 1967年7月20日

上告人

小川あい

右訴訟代理人

瀬沼忠夫

被上告人

池川源之助

右訴訟代理人

高橋長潤

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人瀬沼忠夫の上告理由について。

借地法一〇条による買取請求権は、その行使により当事者間に建物その他地上物件につき売買契約が成立したのと同一の法律効果を発生せしめるものであるから、いわゆる形成権の一種に属するが、その消滅時効については民法一六七条一項を適用すべきものと解するのが相当である。したがつて、本件建物買取請求権は権利を行使することをうる時から起算して一〇年の時効によつて消滅するものと解すべきところ、原審(その引用する第一審判決を含む)の認定によれば、被上告人はおそくとも昭和三〇年七月末日までに上告人に対して本件土地の転借権の譲渡ないし転々貸を承認しない旨を申し入れたというのであり、この事実認定は挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。してみれば、本件建物買取請求権の行使が可能となつた時期はおそくとも昭和三〇年七月末日であり、上告人が被上告人に対して該権利を行使したのは、右権利の行使が可能となつた時から一〇年以上を経過した後である昭和四一年四月一一日であるから、上告人主張の被上告人に対する建物買取請求権はすでに時効によつて消滅している旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その間原判決にはなんら所論の違法は認められない。論旨は、要するに、原審の専権に属する事実認定を非難し、さらには、原審の認定にそわない事実を前提として原判決の違法をいうにすぎないものであつて、採用するに足りない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

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